アップルは変わっていない。いや,いろいろなものが変わったけど,心根はなにも変わっていない。それを感じる,20年目。
quote:マックが誕生してから20年目となる今年のマックワールド・エキスポの基調講演では,登場の年のスーパーボウルで流されたCM「1984」に,iPodを付け加えた「1984-2004」が流された。iTunes ミュージックストアの圧倒的なシェアが述べられ,iPod miniという新しいiPodファミリー製品が発表された。
CM「1984」は,1984年1月22日の第18回スーパーボウルで流された。このときのスーパーボウルの視聴率は,46.4%と云われる。ジョージ・オーウェルの小説「1984年」をなぞり,全体主義思想で塗り固められ,すべてが監視され,管理された行動しか行えない人間だけの社会。だが,その社会の指導者であるビックブラザー(BB)の映るスクリーンに,ハンマーを投げつけて叩き壊す女性が登場する。女性の胸には,マックの絵とアップルのロゴが描かれている。BBとは,当時パソコン市場の標準を作って単独支配をしていたビックブルー,IBM社の比喩でもあった。
「1984-2004」はアップル社のページで観られる。「1984」の映像をそのまま使い,ただiPodだけを追加している。「1984」をいまみると,広告に使うフォントも違うものだし,5色カラーの林檎マークももういまは使っていない。第一,「マッキントッシュ」という言葉も,いまのアップルは使っていないのに,それらをそのまま残している。そんな「1984-2004」で,さて,iPodを持った女性が叩き壊したものは,なんだったのだろうか? 簡単に考えて,アップル以外のすべてのパソコンとウィンドウズ,なのだろう(iPodがウィンドウズで使えるとしても)。いまのアップルを象徴するものであるiPod,それからマックの意義を伝えているんだろう。「1984-2004」の最後の言葉は,次のような意味なのかもしれない。「アップルが作る2004年は,『1984年』と変わっていない2004年には,ならない」。
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